ダイエットを始めようとすると、筋肉が落ちるから食事を減らすなという話を耳にします。一方で、それは嘘だという意見も見かけます。どちらを信じればよいのか迷う方は多いはずです。結論から言うと、答えは条件しだいです。この記事では、筋肉が落ちやすい四つの条件と、落ちているかを自宅で確かめる方法、筋肉を守りながら体重を減らす手順を整理します。

嘘とも本当とも言える理由

ダイエットで筋肉が落ちるかどうかは、検索しても意見が割れています。医師の書籍には落ちないとあり、トレーニングの専門家は落ちると書く。どちらかが間違っているように見えますが、実は話している前提が違います。

意見が割れるのは前提が違うから

落ちないという主張の多くは、食事をゆるやかに整え、身体をふだん通り動かしている人を想定しています。この条件であれば、減っていくのは主に脂肪のほうです。

落ちるという主張は、食事を急に大きく減らし、運動をほとんどしない場合を想定していることが多くなっています。この条件では、脂肪と一緒に筋肉も減りやすくなります。つまり、どちらも条件つきで正しいのです。

減った体重の中身は四つあります

体重計の数字が減ったとき、減っているのは脂肪だけではありません。中身は大きく、水分、糖の貯蔵、脂肪、筋肉の四つに分けられます。

食事を減らし始めた最初の数日は、筋肉や肝臓にためていた糖が使われます。糖はおおよそ三倍の水と一緒に蓄えられているため、糖が減ると水も抜けます。始めてすぐに体重が大きく動くのはこのためで、脂肪がそれだけ減ったわけではありません。そこから先で、脂肪と筋肉の減り方の比率が条件によって変わります。

脂肪は筋肉に変わりません

よく聞く言い回しに、脂肪が筋肉に変わった、筋肉が脂肪に変わった、というものがあります。これは起きません。脂肪と筋肉はまったく別の組織で、一方が他方へ変化することはないからです。

起きているのは、脂肪が減る速さと筋肉が増える速さ、あるいは減る速さの違いです。見た目や体重の変化を考えるときは、二つを別々の帳簿として見ておくと混乱しません。

筋肉が落ちやすい四つの条件

では、どんなときに筋肉まで減りやすくなるのか。当店で減量の相談を受けていると、次の四つが重なっている方が多くいらっしゃいます。一つだけなら影響は小さくても、重なるほど落ちやすくなります。

①減らす速さが急すぎる

一か月で大きく体重を落とそうとすると、食事を大幅に減らすことになります。消費に対して入ってくる量が大きく足りないと、身体は脂肪だけでは追いつかず、筋肉のたんぱく質もエネルギーとして使い始めます。

目安としては、一週間に体重の0.5〜1%程度の減り方がよく紹介されます。体重60kgの方なら、一週間で300〜600gほどです。数字だけ見ると物足りなく感じますが、この速さなら筋肉を残しやすくなります。

②たんぱく質が足りない

食事量を減らすとき、真っ先に減りやすいのが肉や魚、卵、大豆製品です。主食を控えたつもりでも、おかずごと量が減っているケースは少なくありません。

筋肉の材料はたんぱく質です。材料が足りない状態が続くと、筋肉をつくり直す働きが追いつかなくなります。量を減らすときほど、たんぱく質の多い食品は残すように意識してください。腎臓などに持病がある方は、量を変える前に主治医にご相談ください。

③筋肉に負荷をかけていない

筋肉は、使われているからこそ身体が残そうとする組織です。食事を減らしながら何も運動をしていないと、身体からは「使っていないなら手放してよい」と判断されやすくなります。

歩く習慣があっても、それだけでは脚の筋肉に十分な重さがかかりません。立つ、しゃがむ、持ち上げるといった、ある程度の抵抗がかかる動きが必要です。

④睡眠と活動量が削られている

食事を減らすと、気づかないうちに動く量も減ります。空腹で疲れやすくなり、階段を避ける、座っている時間が延びる。こうした小さな変化が積み重なります。

睡眠も同じです。寝不足が続くと食欲が乱れやすく、運動の質も落ちます。筋肉が材料を受け取ってつくり直す時間も削られます。減量中ほど、寝る時間を先に確保しておくことをおすすめします。

理学療法士の視点:落ちるのは使っていない筋肉から

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。筋肉は全身で同じように減るわけではありません。どこから減るかを知っておくと、何を優先して守るべきかが見えてきます。

筋肉は毎日つくり直されています

筋肉は一度できたら変わらない組織ではありません。毎日少しずつ分解され、同じだけつくり直されています。量が保たれているのは、この二つが釣り合っているからです。

つくる側を押し上げるのが、食事から入るたんぱく質と、筋肉にかかる負荷です。分解する側に傾けるのが、エネルギー不足と、使わない時間の長さです。筋肉が落ちるとは、この天秤が分解の側に傾き続けた結果です。

減量中は分解の側に傾きます

食事を減らしている期間は、それだけで天秤が分解の側へ寄ります。ここで負荷もかけなければ、つくる側を支えるものがなくなります。

反対に、減量中でも筋肉に負荷をかけ続けていれば、身体はその筋肉を必要なものとして扱います。材料が少ない中でも、使っている筋肉には優先して回されやすくなります。食事の量より先に、使う機会を残すことが大切なのはこのためです。

太ももとお尻から目立ちます

使わない時間が長いと減りやすいのは、重力に逆らって身体を支えている筋肉です。代表的なのが太ももの前側、お尻、ふくらはぎです。立つ、歩く、階段を上るといった動作を支えています。

デスクワークで座っている時間が長い方は、これらの筋肉が働く時間がもともと短くなっています。そこに食事の制限が加わると、減り方が目立ちやすくなります。当店でも、減量後に階段が重くなったと感じて来られる方がいらっしゃいます。筋肉と基礎代謝の関係については、「筋肉で基礎代謝を上げて痩せる」は嘘かを解説した記事で詳しく扱っています。

落ちているかを確かめる方法

筋肉が落ちているかどうかは、体重の数字だけでは分かりません。自宅でも確かめられる方法を三つご紹介します。どれも、減量を始める前に一度記録しておくと比べやすくなります。

扱える重さや回数を記録する

いちばん分かりやすいのは、力の変化です。自宅なら、椅子から立つ動作を何回続けられるか。ジムなら、同じ種目で扱える重さと回数。

体重が減っているのに、これらが保たれていれば、筋肉は大きく減っていないと考えられます。反対に、体重と一緒に回数も落ちていくなら、減り方が急すぎる合図です。

階段と立ち上がりの感覚

記録をつけていなくても、日常の動作は正直です。駅の階段を上ったときの脚の重さ、床から立ち上がるときに手をつくかどうか。こうした感覚の変化は、太ももやお尻の筋肉の状態をよく表します。

減量を始めてから、以前より階段がつらくなった。そう感じたら、食事の減らし方を一度見直すタイミングです。

太ももの太さをメジャーで測る

膝のお皿の上端から、決まった距離の位置で太ももの周りを測ります。毎回同じ位置で測れるよう、距離を決めておくのがコツです。

お腹まわりは減っているのに、太ももだけが先に細くなっていく場合は、脂肪より筋肉が減っている可能性があります。体組成計の数値は推定値のため、こうした実測と組み合わせて見てください。体組成計の読み方は、基礎代謝の記事の体組成計の節でご紹介しています。

筋肉を守りながら減らす手順

ここまでの条件を裏返すと、やるべきことは多くありません。三つの手順でご紹介します。いずれも痛みのない範囲で行ってください。

週二回、大きい筋肉を使う

守りたいのは、太もも、お尻、背中といった大きい筋肉です。自宅なら、椅子に座って立つ動作をゆっくり行うだけでも、太ももとお尻にしっかり負荷がかかります。

頻度は週に二回を目安にしてください。毎日行うより、間に休みを挟んだほうが、筋肉をつくり直す時間を確保できます。フォームに自信がない方は、回数を増やす前に動き方を確認しておくと遠回りになりません。運動を始めたばかりの方の進め方は、運動初心者の最初の一か月をまとめた記事でも扱っています。

毎食、手のひら一枚分のたんぱく質

たんぱく質は、一度にまとめてとるより、毎食に分けたほうが使われやすいとされています。目安は、肉や魚なら手のひら一枚分です。卵や豆腐、納豆に置き換えても構いません。

食事を減らすときは、まず主食や間食、揚げ物から調整し、おかずのたんぱく質は残す。この順番を守るだけでも、減った体重の中身は変わります。

体重の減りはゆるやかにそろえる

体重は毎日同じ時間に測り、一週間の平均で見ます。一日ごとの上下は水分で大きく動くため、気にしすぎないでください。

一週間の平均が大きく下がりすぎていたら、食事を少し戻す。止まっていたら、少し減らす。ゆるやかな減り方をそろえていくほうが、結果的に筋肉を残したまま目標に近づきやすくなります。お腹を早く引き締めたいからと腹筋だけを増やす方もいますが、腹筋運動でお腹の中央が盛り上がる場合は、ドーミングの見分け方と種目の落とし方を先にご確認ください。

まず医療機関へご相談いただきたい例

  • 食事量を変えていないのに体重が減っている
  • 糖尿病や腎臓病などで通院している
  • 食べることへの不安が強く続いている
  • ふらつきや転びやすさが増えてきた

これらに当てはまる場合は、まず医療機関の受診をおすすめします。当店は医療機関ではないため、診断・治療は行えません。受診のうえで運動の許可が出ていれば、その範囲に合わせて内容を組み立てます。

戸田公園で相談するとき

ここまでの内容は、ご自身で進められる範囲をまとめたものです。ただ、どこまで食事を減らしてよいか、どの種目なら安全に負荷をかけられるかは、身体によって変わります。

動きと体組成を見てから決めます

当店では初回に、体組成の測定と姿勢・動きの確認から始めます。立ち上がりやしゃがむ動作で、太ももやお尻がどれだけ働いているか。痛みをかばった動き方になっていないか。これを見たうえで、減量中に守る筋肉と、負荷のかけ方を決めます。

トレーナーは全員が理学療法士です。お越しになる方の九割は運動初心者で、マンツーマンのため、ほかの利用者と一緒に動くことはありません。膝や腰に不安があって運動を避けてきた方は、腰痛を動きの方向で四タイプに分けた記事や、膝が痛いときにやって良い運動の見分け方もあわせてご覧ください。

食事の相談と通い方

当店にはトレーニングに加えて、オプションで食事指導のメニューもご用意しています。運動と食事を、同じ担当者と相談しながら進められます。

営業は七時から二十二時までで、東口店と西口店の二店舗を併用できます。お子様連れの方には、キッズスペースのある西口店をご案内しています。どのお店にするか迷っている段階の方は、失敗しないジムの選び方5つの軸を先にご覧ください。駅から離れたお住まいの方は、戸田駅・北戸田からの通い方も参考になります。内容ごとの区分はメニュー・料金、場所は店舗情報からご確認いただけます。

よくある質問

有酸素運動をすると筋肉は落ちますか?

有酸素運動そのものが筋肉を削るわけではありません。歩く、自転車をこぐといった運動は、多くの方にとって減量の味方です。落ちやすくなるのは、食事を大きく減らした状態で長時間続け、筋肉に重さをかける運動をしていない場合です。週に二回ほど大きい筋肉に負荷をかけていれば、有酸素運動と組み合わせて進めていただけます。

食事制限だけで痩せても大丈夫ですか?

体重は減りますが、減った中身に筋肉が混ざりやすくなります。食事を減らすと、身体は使っていない組織から手放していくためです。脚の筋肉が減ると、階段や立ち上がりが重く感じられることもあります。食事の調整に加えて、筋肉を使う機会を週に二回ほど残しておくことをおすすめします。持病がある方は、食事の内容を変える前に主治医にご相談ください。

落ちた筋肉は戻せますか?

戻していくことはできます。以前に鍛えていた筋肉は、もう一度使い始めたときに比較的早く戻りやすいことが知られています。ただし、減量中に戻そうとすると時間がかかります。まず体重の減り方をゆるやかにして、扱える重さが落ちない状態をつくる。そのうえで少しずつ負荷を上げていく順番で進めるのがおすすめです。

まとめ

ダイエットで筋肉が落ちるかどうかは、嘘でも本当でもなく、条件しだいです。減らす速さが急すぎる、たんぱく質が足りない、筋肉に負荷をかけていない、睡眠と活動量が削られている。この四つが重なるほど、減った体重の中に筋肉が混ざりやすくなります。反対に、週二回大きい筋肉を使い、毎食たんぱく質を残し、ゆるやかに減らせば、筋肉を守りながら進めやすくなります。

とはいえ、どこまで減らしてよいかを一人で判断するのは難しいものです。戸田公園駅の東口店・西口店では、理学療法士が体組成と動きを確認したうえで進め方をご提案しています。まずは初回身体評価&体験で、いまの状態を一緒に見てみませんか。