久しぶりに会った親の歩き方が、前より小さく、遅くなっていた。立ち上がるときに机に手をつくようになった。そんな変化に気づいて、転ばないか心配になる方は多いと思います。この記事では、高齢の方の転倒が起きやすい場面と、家族が日常で気づけるサイン、嫌がられにくい運動の勧め方を、理学療法士の立場から整理します。
目次
転倒は三つの場面で起きる
転倒というと、外の段差でつまずく姿を思い浮かべがちです。けれど実際には、自宅の中で起きる転倒も少なくありません。場面ごとに、身体のどこが関わっているかが違います。
| 場面 | 起きやすい場所 | 主に関わる身体の働き |
|---|---|---|
| つまずき | 敷居・カーペットの端・玄関 | つま先を持ち上げる筋肉と股関節の曲がり |
| ふらつき | 台所・洗面所・夜のトイレ | バランスを保つ感覚と反応の速さ |
| 立ち上がり | 椅子・ベッド・布団 | 太ももとお尻の力、血圧の変化 |
つまずき:足先が上がらない
歩くとき、前に出す足のつま先は床からわずかに浮いています。すねの前の筋肉(前脛骨筋・ぜんけいこつきん)が弱ったり、股関節が十分に曲がらなくなったりすると、この隙間が小さくなります。わずかな段差やカーペットの端に、つま先が引っかかるようになります。
すり足気味の歩き方は、本人は気づいていないことがほとんどです。廊下で足音が「ずっ、ずっ」と聞こえるようになったら、ひとつの目安です。
ふらつき:向きを変えるとき
まっすぐ歩くより、振り向く、方向を変える、物を取ろうと手を伸ばすといった動きで転ぶ方が多くいます。重心が足の真上から外れる瞬間に、立て直しが間に合わないためです。台所で冷蔵庫と流しを行き来する動きは、この典型的な例です。
立ち上がり:椅子や布団から
座った姿勢から立つときは、太ももの前とお尻の筋肉に大きな力が必要です。力が足りないと、勢いをつけて立とうとして前によろめきます。また、急に立つと血圧が下がり、目の前が暗くなることもあります。立ち上がった直後にふらつく場合は、筋力だけの問題ではない可能性があります。
家族が気づける四つのサイン
転びやすさは、本人の自己申告ではなかなか分かりません。「大丈夫」と答える方がほとんどだからです。一緒に過ごす時間の中で、次のような様子がないかを見てみてください。
| サイン | 見る場面 | 考えられる背景 |
|---|---|---|
| 立つときに手をつく | 食卓の椅子・ソファ | 太ももとお尻の力の低下 |
| 話すと足が止まる | 一緒に歩く散歩・買い物 | 歩くことに注意を取られている |
| 振り向くと足踏みが増える | 呼びかけたとき | 向きを変える動きの不安定さ |
| 段差の前で歩幅が縮む | 玄関・駅の階段 | 足先の上がりにくさ・怖さ |
話しかけると止まる理由
若い方は、話しながら歩いても足は止まりません。歩くことがほぼ自動で行われているからです。ところが、歩くことそのものに注意が必要になってくると、会話が始まった途端に足が止まります。二つのことを同時に行う力(二重課題の能力)が落ちているサインで、話しかけると立ち止まる高齢の方は転びやすいという研究報告もあります。
買い物の途中で話しかけたとき、親が立ち止まって返事をするかどうか。特別な検査をしなくても、家族だからこそ気づける変化です。
受診を先にしたいサイン
次のような場合は、運動を始める前に医療機関へ相談してください。
- 最近になって急に何度も転ぶ
- 立つたびに目の前が暗くなる
- 片側の手足のしびれや、ろれつが回りにくい
- 薬を変えてからふらつく
- 転んだあと痛くて体重をかけられない
ふらつきの原因は、筋力だけでなく、血圧・薬・神経・耳の奥のバランス器官など幅広くあります。当店は医療機関ではないため、診断や治療を行うことはできません。
理学療法士の視点:転びそうな瞬間の立て直し方
人は立っているだけでも、身体がわずかに揺れています。その揺れを感じ取り、倒れる前に立て直す仕組みがあるから転ばずにいられます。転倒予防の運動は、この仕組みのどこが弱っているかで中身が変わります。
足首・股関節・踏み出しの三段階
小さな揺れは、足首の動きで立て直します。足の指で床を押すような、ごく小さな調整です。揺れが大きくなると、股関節を曲げて上半身の位置を変えます。それでも間に合わないときは、一歩踏み出して身体を支えます。
高齢になると、足首で受け止められる揺れの幅が小さくなり、早い段階で股関節や踏み出しに頼るようになります。踏み出す一歩が小さく遅いと、支えきれずに転びます。かかと上げやつま先上げで足首を使う練習が転倒予防の基本とされるのは、この最初の段階を取り戻す練習になるからです。
目を閉じると揺れる理由
バランスは、目からの情報、耳の奥のバランス器官、足の裏や関節からの感覚の三つで保たれています。年齢とともに足の裏の感覚が鈍くなると、目からの情報に頼る割合が増えます。
夜中のトイレで転びやすいのは、暗くて目からの情報が減るからです。寝ぼけて立ち上がる、血圧が下がりやすいといった条件も重なります。廊下やトイレに足元灯を置くのは、運動と同じくらい効果的な対策です。
筋力より先に落ちる反応の速さ
脚の力は、重さを持ち上げる力だけではありません。つまずいた瞬間に、素早く足を出す速さも必要です。年齢とともに、筋力そのものより、力を素早く出す能力のほうが先に落ちやすいと考えられています。
そのため、ゆっくりした運動だけでなく、安全につかまった状態で少しテンポよく動く練習も取り入れます。ただし、これは身体の状態を確かめてから段階的に進めるものです。自宅では、まず次に紹介するゆっくりした運動から始めてください。
運動を勧めるときの伝え方
家族が心配して運動を勧めても、「年寄り扱いするな」と返されることがあります。中身が正しくても、伝え方で受け取られ方が大きく変わります。
転ぶからやめてと言わない
「転ぶと危ないから運動して」という言い方は、本人の不安や反発を強めがちです。それより、本人がこれからもしたいことに結びつけるほうが届きます。孫と出かけたい、旅行に行きたい、自分で買い物を続けたい。その目的のために脚を保つ、という順番で話すと前向きに受け止めてもらいやすくなります。
一度転んだ方の場合は、怖さから外出を控えるようになることがあります。動かない時間が増えると脚の力が落ち、さらに転びやすくなります。この悪循環を断つには、「気をつけて」より「一緒に歩こう」と誘うほうが効果的です。
手を出しすぎると動かなくなる
心配のあまり、立つたびに手を貸し、物を取るのも代わりに行う。こうした手助けは優しさですが、続くと本人が自分で動く機会を減らしてしまいます。危ない場面だけ手を添え、それ以外は時間がかかっても見守る。家族の関わり方も、転倒を防ぐための大切な一部です。
運動に慣れていない方がどう始めればよいかは、運動初心者が最初の一か月で意識したいことをまとめた記事も参考になります。年齢にかかわらず、最初は少ない量から始めるのが続くこつです。
つかまって行う三つの運動
自宅で行う場合は、安定した台所の流しや、動かない椅子の背もたれにしっかりつかまって行います。家族がそばにいるときに始め、痛みやふらつきが出たらすぐにやめてください。
かかと上げで足首を使う
両手でつかまり、足を腰幅に開いて立ちます。ゆっくりかかとを上げ、ゆっくり下ろします。十回を目安に、慣れたら回数を少しずつ増やします。ふくらはぎの筋肉が働き、足首で揺れを受け止める力を保ちます。膝が曲がらないよう、頭の位置を高く保つのがこつです。
つま先上げでつまずきを防ぐ
同じ姿勢のまま、今度はかかとを床につけてつま先を持ち上げます。すねの前の筋肉が働き、歩くときにつま先が床から離れやすくなります。お尻が後ろに引けて倒れやすいので、手は離さずに行ってください。
横歩きでお尻の横を働かせる
流しにつかまったまま、横に三歩進み、三歩戻ります。お尻の横の筋肉(中殿筋・ちゅうでんきん)は、片足で立つ瞬間に骨盤が傾かないよう支える筋肉です。歩くときは常に片足立ちの連続なので、この筋肉が弱ると左右にふらつきやすくなります。
膝に痛みがある方は、無理に回数を増やさないでください。痛みの出方による運動の選び方は、膝が痛いときにやって良い運動の見分け方で解説しています。
戸田公園駅の近くで親の運動を続ける場所を選ぶには
自宅の運動は大切ですが、ひとりだとどうしても続きにくくなります。外に出て運動する場所があると、それ自体が歩く機会になり、人と話す機会にもなります。
親子で体験に来るという選択
運動施設を選ぶときは、最初に身体の状態を確かめてくれるかを見てください。立ち上がり方や歩き方を見ずに種目だけを決める場所では、その方に合った負荷かどうかが分かりません。痛みのある部位をほぐすだけでよいのか迷う場合は、整体とパーソナルジムの違いを整理した記事も判断の材料になります。
当店のトレーナーは全員が理学療法士で、病院でのリハビリの経験をもとに指導しています。お客様の九割は運動初心者で、トップページのお客様の声には七十代の方の体験談も掲載しています。親御さんの様子が気になる方は、ご家族で体験の時間にお越しいただくのもひとつの方法です。
通いやすさは距離より動線
高齢の方が通い続けられるかは、距離の短さだけでは決まりません。買い物や通院のついでに寄れるかなど、普段の生活の動きの中に組み込めるかどうかが大切です。東口店と西口店は併用でき、営業は七時から二十二時までです。店舗の場所や特徴は戸田公園のパーソナルジムLIMITEDのトップページにまとめています。
よくある質問
70代や80代からでも、運動を始めて大丈夫ですか?
年齢だけで始められないということはありません。高齢になってからでも、運動を続けることで脚の力や動きやすさが保たれやすくなります。ただし持病のある方や、最近転んだ方は、始める前に主治医へ相談してください。最初は回数を少なくし、翌日に疲れや痛みが残らない量から始めるのが安全です。
杖を使っていても、運動はできますか?
杖を使っている方でも、つかまる場所を確保すれば行える運動はあります。大切なのは、杖を使うようになった理由を先に確かめることです。膝や腰の痛みなのか、ふらつきなのかで、選ぶ運動が変わります。理由がはっきりしない場合は、まず医療機関で相談してください。
まだ転んだことがなくても、予防は必要ですか?
転んだことがない時期こそ、始めやすい時期です。一度転ぶと、怖さから外出や運動を控えるようになる方が少なくありません。椅子から立つときに手を使うようになった、歩くのが遅くなったなど、小さな変化に気づいた段階で体を動かす習慣をつくっておくと安心です。
まとめ
高齢の方の転倒は、つまずき・ふらつき・立ち上がりの三つの場面で起きやすく、それぞれ関わる身体の働きが違います。立つときに手をつく、話すと足が止まるといった変化は、家族だからこそ気づけるサインです。運動は「転ぶから」ではなく本人のしたいことに結びつけて勧め、つかまって行うかかと上げ・つま先上げ・横歩きから始めてみてください。
戸田公園駅の東口店・西口店では、理学療法士が立ち方や歩き方を確かめてから運動の内容を決めます。親御さんの脚の衰えが気になる方は、まず初回身体評価&体験でお気軽にご相談ください。
