脂肪を落としたいのに、走ると筋肉まで減るのではと心配で、有酸素運動に踏み切れない方がいます。筋トレを始めたばかりの方ほど、この話は気になるものです。この記事では、研究で分かっていること、保たれる筋肉と減りやすい筋肉の違い、筋肉を守りながら有酸素運動を続ける組み立て方を、理学療法士の立場から整理します。
目次
落ちると言われる理由
有酸素運動(歩く、走る、自転車をこぐなど、長く続けられる運動)で筋肉が落ちる、という話は昔からあります。嘘と言い切れないのは、話に複数の根拠が混ざっているからです。
長距離選手の細い身体の印象
マラソン選手は手足が細く、短距離選手は筋肉が大きい。この比較から、長く走ると筋肉が落ちると受け取られることがあります。
ただ、長距離走は軽い身体が有利な競技で、選手は一般の方とは桁の違う距離を走っています。週に数回走る方に、そのまま当てはめることはできません。身体つきの違いは、その競技に向いた人が残った結果でもあります。
「三十分で分解が始まる」説
三十分を超えると筋肉が分解される、という説明もよく見かけます。しかし、何分を境に筋肉が減るという、はっきりした線は確認されていません。
筋肉の分解と合成は、一日中同時に起きています。運動中に分解が高まる場面があっても、一回の運動で筋肉の量が決まるわけではありません。見るべきなのは一回の分数ではなく、数週間から数か月の積み重ねです。
エネルギー不足のときは話が別
身体は、糖質と脂肪を主な燃料にして動きます。食事が足りない状態で長く運動を続けると、筋肉のたんぱく質も燃料として使われる割合が増えます。有酸素運動で筋肉が落ちるという話の、最も確かな部分はここです。
つまり問題は有酸素運動そのものより、エネルギーが足りないまま続けることにあります。減量中に身体で何が起きるかは、ダイエットで筋肉が落ちる条件と防ぎ方で説明しています。
研究で分かっていること
落ちる、落ちないの議論は、体験談になりがちです。ここでは、筋肉量を直接測った研究を見ていきます。
使った脚の筋肉は保たれていた
2024年に発表された分析では、太り気味の成人を対象にした四つの試験がまとめられました。運動を続けた175人は、主に歩く運動を12〜24週間行っています。筋肉量はMRI(磁気で身体の断面を撮る検査)で測られました。
結果は、運動をしなかった人と比べて、脚の筋肉量に差がありませんでした。歩く運動で使い続けた脚の筋肉は、減らなかったことになります。同時に、増えてもいません。
上半身はわずかに減っていた
一方で、全身の筋肉量は約0.3kg、上半身の筋肉量も約0.3kg、運動をしなかった人より少なくなっていました。差のほとんどは、歩く運動で使わない上半身に出ていたわけです。
著者らは、歩く運動は使った筋肉を保つが増やさず、使わない筋肉は保てない可能性があると結論しています。嘘か本当かの答えは、この一文に近いと私は考えています。
なお、対象は太り気味の方です。すでに体脂肪が少ない方が長く運動を重ねた場合に、同じ結果になるとは限りません。
筋トレの効果は消えにくい
有酸素運動を足すと、筋トレの効果が打ち消されるという心配もあります。2022年の複数の研究のまとめでは、両方を組み合わせても、筋肥大(筋肉が太くなること)と最大筋力の伸びは妨げられないと報告されました。
瞬発的な力については、同じ日に続けて行うと伸びが鈍る可能性が示されています。跳ぶ、ダッシュするといった競技をしている方でなければ、大きな問題にはなりにくいでしょう。
理学療法士の視点:走る脚と使わない筋肉
研究の結果は、身体を見てきた感覚とも合います。筋肉は、使われ方に応じて保たれる組織です。ここでは部位の目で整理します。
歩くだけでは負荷が足りない筋肉
歩く動きの主役は、お尻、太ももの裏、ふくらはぎです。一歩ごとに働くので、歩く習慣があれば保たれやすい筋肉です。
反対に負荷が足りないのは、太ももの前の大腿四頭筋(だいたいしとうきん・膝を伸ばす筋肉)です。平らな道では大きな力を出さず、階段や立ち上がりで初めて強く働きます。年齢とともに細くなりやすい筋肉でもあるので、歩いているから大丈夫とは言い切れません。
強い力を出す筋線維は休みがち
筋肉には、持久力に優れた遅筋線維(ちきんせんい)と、強い力を出す速筋線維(そっきんせんい)があります。身体は弱い力なら遅筋線維から使い、強い力が必要なときに速筋線維を呼び出します。
ゆっくり歩く運動で働くのは、主に遅筋線維です。速筋線維は加齢で細くなりやすいとされています。有酸素運動に加えて、少し重いと感じる負荷が週のどこかに欲しい理由です。
背中と腕は動きの中で休んでいる
背中の広背筋(こうはいきん・腕を後ろへ引く大きな筋肉)や胸、腕は、歩く動きの中でほとんど負荷を受けません。腕を振っていても、重さを支えているわけではないからです。
デスクワークの方は、日中もこれらの筋肉をあまり使っていません。そこに歩く運動だけを足して体重が減ると、上半身から細くなったように感じることがあります。姿勢の保ちにくさにつながることもあるので、意識して負荷をかけたい場所です。
痛めて休むと一気に落ちる
私が有酸素運動で最も注意したいのは、筋肉の分解よりも故障です。走ると、着地のたびに体重の二〜三倍ほどの力が脚にかかります。筋力が足りないまま距離を増やすと、膝やすねに負担が集まります。
痛みが出て数週間動けなくなると、筋肉は使わないことで細くなります。これを廃用性萎縮(はいようせいいしゅく・使わないことで筋肉がやせること)と呼びます。有酸素運動が筋肉を奪うのは、多くの場合こうした間接的な形だと考えています。膝に不安がある方は、膝が痛いときにやって良い運動の見分け方を先に確認してください。
落ちやすいやり方と守り方
筋肉を守る鍵は、有酸素運動をやめることではありません。やり方を変えることです。
食事を減らして距離を増やさない
最も筋肉が落ちやすいのは、食事を大きく減らしながら、走る距離を増やす組み合わせです。エネルギーの不足分が大きくなり、筋肉のたんぱく質も使われやすくなります。
減量中は、一度に両方を動かさないでください。食事を整える時期は運動を据え置き、運動を増やす時期は食事を減らしすぎない。消費エネルギーの考え方は、筋肉1kgで基礎代謝がどう変わるかの解説も参考になります。
長く空腹のまま動かない
空腹で運動すると筋肉が分解される、という話も半分は本当です。朝に水を飲んで軽く歩く程度なら、大きな影響は考えにくいでしょう。問題になるのは、朝食を抜いたまま一時間以上走る、前日から食事が少ないといった場面です。
長めに動く日は、一時間から二時間前におにぎりやバナナなどの糖質をとっておきます。運動のあとは、たんぱく質を含む食事を早めにとると安心です。出勤前に動く方は、朝トレで気をつけたい順番もご覧ください。
同じ日なら筋トレを先に行う
有酸素運動で疲れた脚では、スクワットの重さや回数が落ちます。筋肉を保ちたいなら、負荷を保ちやすい筋トレを先に行うほうがよいでしょう。
別の日に分けられるなら、それも良い方法です。ジムに通える回数が限られる方は、週1回のパーソナルジムで変わるための条件を読むと、予定の組み方が見えてきます。
会話できる強さを基本にする
強さの目安は、トークテスト(運動しながら会話できるかを確かめる方法)です。短い文で話せるけれど、歌うのは難しい。この程度が中強度です。
WHOの指針は、成人に週150〜300分の中強度の有酸素運動と、週2日以上の筋力を強める運動をすすめています。両方が並んでいることが大切で、どちらか一方で足りるという書き方にはなっていません。
運動別に足りない筋肉を補う
有酸素運動には、よく使う筋肉と使わない筋肉があります。自分の運動に合わせて足りない場所を補います。
| 運動 | よく使う筋肉 | 負荷が足りない筋肉 | 足したい動き |
|---|---|---|---|
| ウォーキング | お尻・太もも裏・ふくらはぎ | 太もも前・背中・胸 | 立ち上がる・引く・押す |
| ジョギング | お尻・太もも・ふくらはぎ | 背中・胸・腕 | 引く・押す |
| 自転車 | 太もも前・お尻 | 背中・胸・体重を支える筋肉 | 片脚で支える・引く・押す |
| 水泳 | 背中・肩・体幹 | 体重を支える脚の筋肉 | 立ち上がる・踏み込む |
※一般的な傾向です。フォームや強さによって変わります。
自宅で足す三つの運動
歩く、走るだけでは負荷が足りない場所を補う運動です。週に二回、有酸素運動のない日か、運動の前に行ってください。痛みが出たら中止します。
テーブルに手をつく斜めの腕立て
安定したテーブルの縁に両手をつき、足を後ろへ引いて身体を一直線にします。胸をテーブルへ近づけ、押し返します。十回を二セットが目安です。
胸と腕に負荷をかける運動です。床で行う腕立てより軽く、手をつく高さを変えると強さを調整できます。滑らない場所で行ってください。
ペットボトルで背中を引く
水を入れたペットボトルを片手に持ち、反対の手を椅子の座面につきます。背中をまっすぐ保ち、ひじを後ろへ引いて、ゆっくり戻します。左右十回ずつ行います。
手で持ち上げるのではなく、ひじを腰の横へ近づける意識で動かすと、背中の筋肉に力が入りやすくなります。
足を前後に開いて沈む
足を前後に開いて立ち、壁や椅子の背に軽く手を添えます。両膝を曲げて真下へ身体を沈め、前の足で床を押して戻ります。左右八回ずつが目安です。
太ももの前とお尻に、歩くより大きな負荷がかかります。膝に痛みがある方は沈む深さを浅くするか、この運動は避けてください。
次のような場合は、運動量を増やす前に医療機関へ相談してください。
- 運動すると胸が痛む・息切れが強い
- 膝やすねの痛みが数日続く
- 歩くと脚が痛み、休むと痛みが引く
- 意図せず体重が減っている
- 持病で運動を制限されている
当店は医療機関ではないため、診断や治療は行えません。運動量を増やしてよいか判断に迷う場合は、かかりつけ医にご確認ください。
戸田公園駅の近くで有酸素と筋トレを組むなら
有酸素運動と筋トレは、どちらかを選ぶものではありません。配分を決めることが、筋肉を守る近道です。
歩く習慣を土台に筋トレを足す
戸田市は坂が少なく、歩く、自転車で移動するといった運動を生活に組み込みやすい地域です。埼京線の通勤で毎日歩いている方なら、有酸素運動の土台はすでにできています。
そうした方がジムで優先したいのは、歩くだけでは負荷が足りない太ももの前や背中、胸です。限られた時間は、日常で使わない場所に回すほうが、身体の変化につながりやすいと考えています。
走る前に身体の準備を確かめる
当店のトレーナーは全員が理学療法士です。お客様の九割は運動初心者で、体組成の測定と動きの確認から始めます。膝や腰に不安がある方には、有酸素運動の種類や量も含めて、週の組み立てを一緒に考えます。
東口店と西口店は七時から二十二時まで営業しており、二店舗を併用できます。トレーニングと整体とピラティスの組み合わせについては、戸田公園のパーソナルジムLIMITEDのトップページにまとめています。
よくある質問
有酸素運動は何分までなら筋肉が落ちませんか?
何分までなら安全という線は確認されていません。食事が足りていて筋トレも続けていれば、三十分から一時間の運動で筋肉が目に見えて減ることは考えにくいでしょう。心配な方は、分数より、筋トレの重さや回数が落ちていないかを確認してください。
走るのと歩くのでは、どちらが筋肉は落ちやすいですか?
消費エネルギーが大きいぶん、食事が足りないときの影響はランニングのほうが出やすくなります。ただ、脚に強い刺激が入るのもランニングです。どちらを選ぶかより、膝や腰に痛みなく続けられるか、上半身の筋トレを足しているかが大切です。
筋トレと有酸素運動は同じ日に行っても大丈夫ですか?
問題ありません。同じ日に行うなら、負荷を保ちやすい筋トレを先に行うのがおすすめです。脚の筋トレを中心に行った日は、有酸素運動を軽い歩きにとどめると、翌日に疲れが残りにくくなります。
まとめ
有酸素運動で筋肉が落ちるという話は、半分は嘘で、半分は本当です。使っている筋肉は保たれやすく、使っていない上半身などは減ることがあります。落ちやすいのは、食事が足りないまま距離を増やしたときと、痛めて休んだときです。有酸素運動はやめなくてかまいません。使わない筋肉に筋トレを足し、食事を保ちながら続けてください。
戸田公園駅の東口店・西口店では、有酸素運動と筋トレの配分も一緒に考えます。自分に合う組み立てを知りたい方は、初回身体評価&体験でお気軽にご相談ください。
