写真に写った自分の肩が、思ったより前に出ている。背すじを伸ばしても、肩だけが内側に入ったまま戻らない。そんな巻き肩の悩みは、猫背と一緒に語られることが多いものです。この記事では、猫背との違い、自分で確かめる方法、肩が前に引かれる仕組み、今日からできるケアを、理学療法士の立場から整理します。

巻き肩と猫背は別のもの

巻き肩とは、肩の先端が身体の前方へ出て、内側に巻き込まれたように見える状態です。医学的な病名ではなく、姿勢の特徴を表す言葉として使われています。

肩の向きと背中の丸みは別の問題

猫背は、背骨が後ろに丸くなった状態を指します。一方の巻き肩は、背骨ではなく肩の位置の問題です。猫背の方に巻き肩が重なっていることは多いのですが、背すじがまっすぐなのに肩だけが前に出ている方もいます。

そのため「背すじを伸ばせば肩も戻る」とは限りません。背中は伸びても肩の向きが変わらない場合、原因は背骨とは別のところにあると考えます。猫背や反り腰の見分け方は、座ると猫背・立つと反り腰になる原因と見分け方で解説しています。

巻き肩は三つの成分に分かれます

ひと口に巻き肩と言っても、身体の中で起きていることは一つではありません。理学療法の現場では、次の三つに分けて考えます。

成分起きていること見た目の特徴
肩甲骨の前傾肩甲骨の上側が前に倒れる肩の前が下がり、鎖骨が目立たない
肩甲骨の外転肩甲骨が背骨から離れて外へ回る背中が横に広く、平たく見える
腕の内旋腕の骨が内側にねじれる手の甲が前を向き、ひじが外を向く

多くの方はこれらが混ざっていますが、どれが強いかで、ほぐす場所も鍛える場所も変わります。同じ巻き肩でも、人によってケアの中身が違うのはこのためです。

自分で確かめる三つの方法

ここで紹介する方法は、診断のためのものではありません。自分の巻き肩がどの成分に寄っているかの目安をつけるための確認です。痛みが出る場合は無理に続けないでください。

立って手の甲の向きを見る

力を抜いて立ち、腕を身体の横に自然に垂らします。鏡の前で、手の甲がどちらを向いているかを見てください。手のひらが太ももの横を向いていれば標準的な位置です。手の甲が正面を向いている場合は、腕の骨が内側にねじれている可能性があります。

このとき、ひじの内側のくぼみの向きも確かめてみてください。くぼみが内側どうしで向き合っていれば、腕の内旋の要素が強いと考えられます。

仰向けで肩の前の浮きを見る

床に仰向けになり、腕を身体の横に置いて力を抜きます。肩の前側が床から浮いているかを、家族に横から見てもらうか、手を差し込んで確かめます。

大きく浮いている場合は、肩甲骨が前に傾いている要素が考えられます。左右で浮き方が違う方も多く、浮きが大きい側ほど胸の前が硬くなっていることがよくあります。

左右の差と生活のくせを見る

正面から鏡を見て、左右の肩の高さと前後の位置を比べます。片側だけ前に出ている場合は、生活の中のくせが関わっていることがほとんどです。

いつも同じ肩にかばんをかける、同じ向きで横向きに寝る、パソコンのマウスを片手で長時間使う。こうした習慣は、片側の肩だけを前に引き続けます。左右差に気づいたら、まず生活の中で偏りがないかを振り返ってみてください。

理学療法士の視点:胸の形が肩の位置を決める

肩甲骨は、鎖骨とつながる一点を除いて、骨どうしの関節を持ちません。筋肉に吊られて、肋骨の上に浮かぶように乗っています。だからこそ、周りの筋肉の張り具合と、土台になる胸の形の影響を強く受けます。

小胸筋が肩甲骨を前に傾ける

胸の奥には、小胸筋(しょうきょうきん・肋骨から肩甲骨の前の突起へつながる小さな筋肉)があります。この筋肉が縮んで硬くなると、肩甲骨の上側を前下方へ引っぱり、肩甲骨が前に傾きます。

小胸筋は、息を大きく吸うときにも働く筋肉です。前かがみの姿勢で浅い呼吸が続くと、小胸筋は休む時間がないまま縮んだ位置に慣れていきます。デスクワークの方に巻き肩が多いのは、腕の位置だけでなく、呼吸の浅さも関わっていると考えられます。

丸い胸郭の上で肩甲骨は前へ滑る

肩甲骨が乗っている胸郭(きょうかく・肋骨と背骨で囲まれた鳥かごのような骨格)の形も大切です。背中の上部が丸くなると、胸郭の後ろ側のカーブが強くなります。肩甲骨は、そのカーブに沿って外へ、前へと滑っていきます。

つまり、背中の上部の丸みが、肩を前へ運ぶ坂道をつくっている状態です。この場合、肩だけを後ろへ引いても、坂道が残っている限り、肩は元の位置に戻っていきます。背中の上部を起こす動きが巻き肩のケアに含まれるのは、このためです。

肩甲骨を寄せるだけでは戻らない

巻き肩を直そうとして、肩甲骨を背中の中央に強く寄せる方は少なくありません。けれど、肩甲骨が前に傾いたまま寄せると、肩がすくんで首の付け根に力が入ります。胸を張ろうとして腰が反り、肩の代わりに腰が頑張ってしまう方もいます。

大切なのは、寄せることよりも、前に傾いた肩甲骨を肋骨に沿わせて起こすことです。そのためには、胸の前をゆるめ、背中の上部を起こし、肩を後ろで支える筋肉を働かせる。この順番で整えていくと、無理に力を入れなくても肩が戻りやすくなります。

放っておくと起きること

巻き肩そのものは病気ではありません。ただ、肩が前に出た位置が続くと、周りの筋肉や関節の働き方が少しずつ変わっていきます。

首と肩の張りが抜けにくい

肩が前に出ると、頭も前に出やすくなります。頭の重さを支えるために、首の後ろや肩の上の筋肉が働き続けます。マッサージでほぐしても数日で張りが戻る場合は、肩の位置が変わっていないことが理由の一つと考えられます。張りが戻る仕組みは肩こりが揉んでも戻る理由と対策で詳しく解説しています。

腕を上げる動きが窮屈になる

肩甲骨が前に傾いたままだと、腕を上げたときに肩の上の空間が狭くなります。高い棚に手を伸ばす、洗濯物を干すといった動作で、肩の前に詰まるような感覚が出る方もいます。

痛みで腕が途中から上がらない、夜に肩がうずくといった場合は、姿勢の問題ではなく肩の関節そのものの問題かもしれません。見分け方は五十肩と肩こりの違いと受診の目安で解説しています。

次のような場合は、運動の前に医療機関へ相談してください。

  • 腕や手にしびれがある
  • 手に力が入りにくい
  • 腕を上げると手が白くなる
  • 安静にしていても強く痛む
  • 転んだあとから肩が痛む

首や鎖骨の周りで神経や血管が圧迫されると、腕にしびれやだるさが出ることがあります。当店は医療機関ではないため、診断や治療は行えません。

今日からできるセルフケア

三つとも、痛みのない範囲で行ってください。順番に意味があるため、上から順に行うのがおすすめです。

胸の前をゆるめる

壁の横に立ち、ひじを肩の高さで曲げて、前腕を壁につけます。そのまま、壁と反対の方向へ身体をゆっくりひねり、胸の前が伸びる位置で止めます。息を吐きながら二十秒ほど保ち、左右で行います。

肩の前に痛みが出る場合は、ひじの高さを下げてください。伸ばす感覚は、肩の付け根ではなく胸の前にあるのが目安です。

背中の上部をひねる

横向きに寝て、膝を軽く曲げ、両腕を身体の前でそろえます。上の腕を、天井を通って後ろへ開くように動かし、胸を天井へ向けます。目線は手を追いかけます。開いたところで二回ほど呼吸し、元に戻します。

このとき、膝が床から浮かないようにするのがポイントです。腰ではなく、背中の上部をひねることが目的です。左右五回ずつを目安にしてください。

腕を外にひねって止める

立ったまま、ひじを九十度に曲げて脇腹につけます。ひじを脇から離さずに、手を外側へゆっくり開き、三秒止めて戻します。肩がすくまないように、首は長く保ったまま行います。

この動きでは、肩甲骨の裏側にある筋肉が働きます。腕の骨を外へ回し、肩を後ろで支える役目の筋肉です。ゆるめたあとにこの動きを入れると、肩の位置が保たれやすくなります。十回を一日に数セット、こまめに行うのがおすすめです。

戸田公園駅の近くで巻き肩を相談するなら

セルフケアで肩が軽くなっても、しばらくすると元に戻ってしまう。そうした場合は、どの成分が強いのかを外から確かめてもらうと、ケアの中身を絞りやすくなります。

ジムで巻き肩を強めやすい習慣

トレーニングを始めると、胸の種目や腕の種目に偏りがちです。胸を鍛える種目ばかりを行うと、小胸筋を含む胸の前の筋肉がさらに縮みやすくなります。背中を引く種目でも、肩をすくめて引くと首の筋肉ばかりが働きます。

巻き肩が気になる方は、胸と背中の種目の量をそろえ、引く動きでは肩を下げたまま行うことを意識してください。どの種目から始めればよいか迷う方は、運動初心者が最初の一か月で意識したいことも参考になります。

順番を決めてから鍛える

当店のトレーナーは全員が理学療法士です。巻き肩のご相談では、手の甲の向き、肩甲骨の傾き、背中の上部の動き、呼吸の深さを確かめてから、ゆるめる場所と鍛える場所の順番を決めます。必要に応じて整体の手技やピラティスの呼吸も組み合わせます。

お客様の九割は運動初心者です。東口店と西口店は併用することができ、営業は七時から二十二時までです。店舗の場所や特徴は戸田公園のパーソナルジムLIMITEDのトップページにまとめています。

よくある質問

巻き肩は、ストレッチだけで戻りますか?

胸の前をゆるめると、その場では肩が開きやすくなります。ただ、肩を後ろで支える筋肉が働かないままだと、時間がたつと元の位置に戻りやすくなります。ゆるめることと、支える筋肉を働かせることを組み合わせるのが、いちばんの近道です。

肩甲骨を寄せる意識だけでよいですか?

寄せる意識だけでは、肩がすくんだり腰が反ったりして、別の場所に負担が移ることがあります。巻き肩では肩甲骨が前に傾いていることが多いため、寄せるよりも、背中の上部を起こして肩甲骨を肋骨に沿わせる意識のほうが合う方が多くいらっしゃいます。

巻き肩でも、筋トレをしてよいですか?

痛みやしびれがなければ、筋トレは問題なく行えます。ただし、胸の種目ばかりに偏ると巻き肩を強めることがあります。背中を引く種目と組み合わせ、肩がすくまないフォームで行うことが大切です。しびれがある場合は、先に医療機関で確認してください。

まとめ

巻き肩は、背骨が丸くなる猫背とは別に、肩の位置そのものが前に出た状態です。肩甲骨の前傾、肩甲骨の外転、腕の内旋という三つの成分が混ざっており、胸の前の小胸筋と背中の上部の丸みが、肩を前へ運ぶ大きな要因になります。肩甲骨を寄せるだけでなく、胸の前をゆるめ、背中の上部を起こし、肩を後ろで支える筋肉を働かせる。この順番で少しずつ整えていきましょう。

戸田公園駅の東口店・西口店では、理学療法士が肩と背中の状態を確かめてから内容を決めます。自分の巻き肩がどのタイプか知りたい方は、まず初回身体評価&体験でお気軽にご相談ください。