お尻を鍛えるつもりでヒップリフトを始めたのに、効いているのは腰ばかり。回数を重ねると太ももの裏がつりそうになる——体験トレーニングでお尻の種目を行うと、デスクワーク中心の方や産後に運動を再開した方から、とてもよく伺う悩みです。

この記事では、腰のどこが痛むかによって原因が変わること、足の位置で効く場所が変わる理由、お尻で持ち上げる4つのコツ、受診したほうがよいサインをお伝えします。読み終えるころには、次の1セットで何を変えるかが決まります。

ヒップリフトで腰に来る理由

はじめに、ヒップリフトのあいだに体の中で何が起きているかを整理させてください。ここが分かると、あとの表とコツが読みやすくなります。

持ち上げる動きは2通りある

仰向けからお尻を持ち上げる方法は、大きく2つあります。ひとつは、股関節を伸ばしてお尻を持ち上げる方法です。もうひとつは、腰を反らせて骨盤を持ち上げる方法です。見た目の高さは同じでも、働いている場所はまったく違います。

ヒップリフトが本来ねらうのは前者です。股関節を伸ばす主役は、お尻の大きな筋肉(大殿筋・だいでんきん・お尻の丸みをつくる、体でいちばん大きな筋肉)です。腰が痛む方の多くは、この筋肉が働く前に後者の動きで持ち上げています。

長く座る生活が反りを招く

一日の大半を座って過ごすと、股関節は曲がったままの時間が長くなります。すると股関節の前の筋肉(腸腰筋・ちょうようきん・太ももを持ち上げる、お腹の奥の筋肉)が縮んだ状態に慣れていきます。

この状態でヒップリフトをすると、股関節が伸びきる手前で止まってしまいます。それでも高く上げようとすると、足りない分を腰が反って補います。通勤で座り、職場で座り、帰宅してまた座る生活では、ここがとても起きやすくなります。

原因は3つにまとまります

臨床でヒップリフトの腰の痛みを見ていると、原因はおおむね次の3つに分かれます。

  • 上げ方:骨盤を後ろへ傾けないまま、腰を反らせて持ち上げている
  • 上げる高さ:股関節が伸びきった先まで上げ、肋骨が持ち上がっている
  • 足の位置:お尻以外の筋肉が働きやすい位置に足を置いている

一般的な解説の多くは「腰を反らさない」「お尻を締める」で話を終えます。ただ、意識しても腰に来る方は少なくありません。その場合は、2つ目か3つ目が残っています。

痛む場所で分ける

ここがこの記事でいちばんお伝えしたい部分です。「ヒップリフトで痛い」といっても、腰の真ん中・腰の片側・お尻の横・太ももの裏では、起きていることが違います。指で場所を指して確かめてください。

場所と局面の早見表

痛む場所痛みやすい局面起きやすいこと先に見る所
腰の真ん中(ベルトの高さ)上で止めたとき腰を反らせて高さを出している肋骨が持ち上がっていないか
腰の片側上げる途中から上片方の脚で多く押している骨盤が左右水平か
お尻の横・腰の横回数の後半膝が内や外へ倒れるのを支えている膝と足の向き
太ももの裏(つる)上げきる直前足が遠く、太ももの裏が主役になっているかかとの位置
膝の前上げる途中足が近すぎ、前ももで押しているかかとが浮いていないか
首・肩の後ろ上で止めたとき頭や肩で床を強く押しているあごが上がっていないか
翌日の腰の重さ翌日〜2日後上で長く止めて反りが続いた止める秒数と回数

いちばん多いのは腰の真ん中です。上げきった位置で腰に手を当てると、背骨の両側の筋肉が硬く盛り上がっているはずです。お尻ではなく、背中の筋肉で骨盤を吊り上げている状態です。

次に多いのが太ももの裏です。つる、張る、という訴えはほぼこの位置です。これは腰の問題ではなく、足の位置の問題であることがほとんどです。次の章で詳しく扱います。

片側だけ痛むとき

腰の片側だけが痛む方は、骨盤が左右で傾いたまま持ち上げていることが多くあります。利き足のほうで強く押すと、反対側の骨盤が下がり、腰の片側がねじれながら反ります。

確かめ方は簡単です。上げた位置で、左右の腰骨の出っぱりに手を置いてください。片方が低い、または片方が先に上がってくるなら、左右の押す力に差があります。足の裏の体重を、親指の付け根・小指の付け根・かかとの3点に左右同じくらい乗せてから上げ直します。

足の位置で効く場所が変わる

ヒップリフトは、足を置く場所が数センチ違うだけで、働く筋肉が入れ替わる種目です。腰や太ももの裏に来る方は、足の位置を変えるだけで楽になることが多くあります。

かかとの距離で主役が変わる

かかとの位置膝の角度主に働く場所起きやすい痛み
お尻のすぐ近く深く曲がる前もも膝の前
指先が軽く触れる距離90度前後お尻起きにくい
指先から足1つ分遠いやや伸びるお尻と太ももの裏太ももの裏の張り
さらに遠い伸び気味太ももの裏太ももの裏がつる・腰

目安は、仰向けで腕を体の横に伸ばしたとき、中指の先がかかとに軽く触れる位置です。上げきったときに、すねがほぼ垂直になっていれば合っています。

足幅とつま先の向き

足幅は腰幅から、こぶし1つ分広いくらいまでにします。つま先は正面か、わずかに外へ向けます。膝はつま先と同じ方向に向けてください。

膝が内へ倒れると、お尻の横の筋肉(中殿筋・ちゅうでんきん・骨盤の横にあり、脚を外へ開く筋肉)が支えきれず、腰の横やお尻の横が疲れます。膝の間にクッションをはさむと、膝の向きが安定しやすくなります。

かかとで押すか足裏全体か

「かかとで押すとお尻に効く」という説明をよく見かけます。間違いではありませんが、つま先を浮かせてかかとだけで押すと、太ももの裏も一緒に強く働きます。太ももの裏がつる方には、足の裏全体で床を押す形のほうが向いています。かかと寄りに体重を乗せる、くらいの感覚で十分です。

お尻で上げる4つのコツ

足の位置が決まったら、次は上げ方を変えます。どれも道具なしで、その日から試せます。

1つ目|骨盤を倒してから上げる

お尻を浮かせる前に、腰と床のすき間をつぶすように骨盤を後ろへ傾けます。おへそを軽くのぞき込み、下腹を少しへこませる感覚です。この姿勢のまま、お尻を締めて床から離します。

先に骨盤を倒しておくと、腰が反った状態から動き出すことがなくなります。お腹が働く順番については、腹筋の種目別に腰が反りやすい場面でも同じ考え方を使っています。

2つ目|肋骨が上がる前で止める

上げる高さの目安は「膝・股関節・肩が一直線」です。ただ、この一直線を腰を反らせて作ってしまう方が多くいます。

確かめ方として、片手をみぞおちの下、肋骨のいちばん下のふちに置いてください。上げていく途中で肋骨が前へ持ち上がり、手が押し返される感じがしたら、そこが限界です。肋骨が動き出す手前で止めるのが、今のあなたにとっての正しい高さです。一直線に届かなくてもかまいません。

3つ目|上で長く止めない

上で何十秒も止めると、お尻が疲れたあとに腰の筋肉が代わりを始めます。最初は上で2秒止めて、3秒かけて下ろすくらいにしてください。お尻が疲れてきて腰に手応えが移ったら、その回でセットを終えます。

4つ目|息を吐きながら上げる

息を止めて力むと、お腹の圧が抜ける瞬間に腰が反りやすくなります。息を吐きながら上げ、上で軽く吸い、吐きながら下ろします。下ろすときは、お尻からではなく背中の上のほうから順に床へ戻すと、最後まで骨盤が倒れたまま下ろせます。

理学療法士の視点|腰と股関節を切り分ける

ここからは、臨床でお尻の運動を評価するときに実際に見ているものをお伝えします。

股関節の前が伸びるかを先に見る

ヒップリフトの上の位置では、股関節は伸びきった角度になります。ここまで股関節が伸びない方は、どれだけ意識しても腰で補うしかありません。フォームの問題に見えて、実は可動域の問題というケースです。

当店で行う確認は簡単です。仰向けに寝て、片方の膝を両手で胸へ抱え込みます。このとき、伸ばしている側の太ももの裏が床から浮いてくるなら、股関節の前が縮んでいます。左右とも確かめてください。

浮いてくる方は、ヒップリフトの前に股関節の付け根を伸ばす時間を1〜2分入れてください。片膝立ちで骨盤を後ろへ傾け、付け根の前を伸ばす方法が合います。手順は反り腰を自宅で整える4つの順番で写真なしでも分かるように説明しています。

お尻は膝を曲げた位置で強く働く

股関節を伸ばす筋肉は、お尻の大殿筋と太ももの裏の筋肉(ハムストリングス・太ももの裏にあり、膝を曲げ股関節を伸ばす筋肉)の2つです。太ももの裏の筋肉は、膝をまたいで付いています。

膝を深めに曲げると、太ももの裏の筋肉は縮んだ位置になり、力を出しにくくなります。その分、お尻が主役として働きやすくなります。足をお尻に近づけるとお尻に効き、遠ざけると太ももの裏に効く理由はここにあります。足の位置の表は、この仕組みを使っています。

腰を固定したまま股関節を動かす力

評価でもうひとつ見るのが、腰を動かさずに股関節だけを動かせるかです。仰向けで膝を立て、骨盤を後ろへ傾けたまま、片方の足を床から少し浮かせていただきます。骨盤が傾いたり、腰が浮いたりすれば、腰と股関節を分けて使う力がまだ足りていません。

この力が足りないまま回数を増やすと、腰が反る癖のほうが強化されます。当店では、この確認で骨盤がぶれる方には、ヒップリフトの回数を増やす前に、お尻を数センチだけ浮かせる小さな範囲から始めてもらっています。フォームのうち自分で見られる所と見られない所の境目は、筋トレのフォームで自分では見えない3か所で整理しました。評価の違いについては理学療法士のいるジムと普通のジムの違いにまとめています。

痛むあいだの進め方

腰が痛むからといって、お尻の運動を全部やめる必要はありません。腰が反りにくい段階まで戻して、そこから順に上げていくほうが、お尻の筋力を落とさずに済みます。

段階で並べる

段階やり方次へ進む目安
1 骨盤の前後運動仰向けで骨盤を前後に傾けるだけ腰が痛まず10回できる
2 小さなヒップリフトお尻を床から3〜5cmだけ浮かせる肋骨が動かず10回できる
3 通常のヒップリフト肋骨が上がる手前まで上げる腰に手応えが移らず10回
4 クッションをはさむ膝の間に挟んで上げる膝が倒れず10回できる
5 上で足踏み上げたまま片足ずつ浮かせる骨盤が傾かず左右5回ずつ
6 片脚ヒップリフト片脚を伸ばしたまま上げる左右差が小さく8回ずつ

腰が痛む時期は、段階1か2から始めてください。1回の練習で段階を2つ以上飛ばさないことが大切です。ベンチに背中を乗せて行うヒップスラストは、段階6が安定してからにします。

続けてよい痛みの目安

お尻の筋肉が疲れて熱くなる感じは、続けてかまいません。量の判断は、運動中は10段階で3まで・翌朝で判定する目安を腰にもそのまま使えます。翌朝、起き上がるときに腰が重ければ、前の段階に1つ戻します。

膝の前が痛む場合は、足が近すぎることが多いため、まず足の位置を見直してください。膝の痛み方の分け方は、スクワットで膝の痛む場所を分ける方法が参考になります。首や肩の後ろが疲れる方は、頭で床を押していないかを確かめてください。首に力が入る仕組みは腹筋で首が痛いときの原因と丸め方で説明しています。

産後に始める方へ

ヒップリフトは産後の運動再開でよく使われる種目です。ただし、おなかの中心が盛り上がってくる、骨盤の底に重さを感じる場合は、まだ早い合図です。始める時期の判断は、産後の種目別に始めてよい時期の目安で整理しています。

やめる日と受診する日

腰に不安のある方ほど、「少しでも痛んだら中止」としてしまい、お尻の運動をいつまでも再開できなくなります。量の目安は前の章のとおりです。そのうえで、次のサインは別に扱ってください。

その日はやめるサイン

次のどれかが出た日は、その日のヒップリフトを中止してください。

  • 腰の一点に、刺すような鋭い痛みが出た
  • 回数を重ねるほど、腰の痛みが強くなってきた
  • 太ももの裏がつり、伸ばしても戻らない
  • 終わったあと、前かがみや立ち上がりで腰が痛む
  • 翌朝、寝返りや起き上がりで腰の痛みが残っている

受診をすすめるサイン

当店は医療機関ではありませんので、診断や治療は行えません。次のような場合は、運動やセルフケアより先に整形外科へご相談ください。

  • お尻から太もも、ふくらはぎへ、しびれや痛みが走る
  • 脚に力が入りにくい、つまずきやすくなった
  • 運動していなくても痛む、夜に痛みで目が覚める
  • 発熱を伴う、または転んだあとから痛む
  • 2週間ほど運動を控えても痛みが変わらない

また、尿や便が出にくい・漏れる、股のまわりがしびれるといった症状がある場合は、様子を見ずに早急に受診してください。腰の病気で治療中の方、腰の手術を受けたことがある方は、ヒップリフトを始める前に主治医へ確認してください。腰痛そのものの考え方は腰痛の原因と対策に、医療機関でのリハビリを終えたあとの進め方は病院のリハビリを終えた後の3つの選択肢にまとめています。

まとめ

ヒップリフトで腰が痛いとき、原因はおおむね上げ方・上げる高さ・足の位置の3つです。まず痛む場所を確かめ、腰の真ん中なら肋骨が上がる手前で止める、太ももの裏なら足を近づける、と変える場所を絞ります。上げる前に骨盤を後ろへ傾け、息を吐きながらお尻で持ち上げ、背中の上から順に下ろしてください。股関節の前が縮んでいる方は、付け根を伸ばしてから行います。しびれがある、安静にしていても痛む場合は、運動を止めて受診してください。

武蔵浦和のジム・パーソナルジムLIMITED武蔵浦和店は、JR武蔵浦和駅から徒歩3分のジムです。さいたま市南区・中浦和・南浦和・北戸田・戸田市エリアから、デスクワークで座る時間が長い方や、家でのお尻の運動を見直したい方が通われています。トレーナーは全員が医療系国家資格「理学療法士」を持ち、加えて全米エクササイズ&スポーツトレーナー、JATIトレーニング指導者、PHIピラティスインストラクターなどの資格を持つ者が在籍しています。通い放題プランではトレーニング・整体・ボクササイズを追加料金なしで選べるため、同じ担当者が手技と運動の配分を決められます。ウェアのレンタルとウォーターサーバーがあり、キッズスペースもございます。営業時間は8:00〜22:00です。

自分の股関節がどこまで伸びていて、どの足の位置ならお尻に効くのかを一度見てもらいたい方は、60分の体験トレーニング(5,000円・税込)で姿勢と動作のチェックを受けてみてください。ご予約は下のボタンのほか、公式LINEから24時間受け付けています。運動が初めての方も、骨盤を傾ける練習から一緒に始めましょう。

よくある質問

ヒップリフトは腰痛に良いと聞きましたが、腰が痛くなるのはなぜですか?

お尻ではなく腰を反らせて持ち上げていることが、いちばん多い理由です。ヒップリフトは本来、股関節を伸ばす動きでお尻を持ち上げる種目です。ところが、長く座る生活で股関節の前が縮んでいると、股関節が伸びきる手前で止まり、足りない分を腰を反らせて補います。その結果、腰の真ん中に負担が集まります。上げる前に骨盤を後ろへ傾けてお腹を軽く締めること、肋骨が持ち上がる手前で止めることの2つを守ると、腰に来にくくなる方が多くいらっしゃいます。

ヒップリフトで太ももの裏がつるのはどうしてですか?

足の位置がお尻から遠すぎることが主な理由です。かかとが体から離れるほど膝が伸び、持ち上げる仕事がお尻から太ももの裏の筋肉へ移ります。太ももの裏は縮みきった位置で強く働くとつりやすい筋肉です。仰向けで腕を体の横に伸ばし、指先がかかとに軽く触れるくらいまで足を近づけてください。つま先を浮かせてかかとで押す方法も、太ももの裏に効きやすくなるため、つる方は足の裏全体で床を押す形に戻してください。

ヒップリフトで腰が痛いときは、休んだほうがよいですか?

腰が痛む形での反復はその日は中止してください。ただし、お尻の運動をすべて止める必要はないことが多くあります。お尻を床から数センチだけ浮かせる小さな範囲に変える、仰向けで骨盤を前後に傾ける練習に戻す、といった方法で、腰に負担をかけずにお尻を使えます。お尻から脚へしびれや痛みが走る、脚に力が入りにくい、安静にしていても痛む場合は、運動を続けず整形外科を受診してください。排尿や排便の異常、股のまわりのしびれがある場合は早急に受診してください。当店は医療機関ではありませんので、診断や治療は行えません。

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